稱名寺では年に2回(春と秋)に『稱名寺通信』として、寺報(お寺の広報紙)を発行しております。その中で、2014年の秋から稱名寺門徒の浅間恒雄さんに、「稱名寺とその周辺の植物」と題して、境内や山門前の春風公園にある植物の解説をご寄稿いただき、紹介いたしております。
今回の記事は、稱名寺通信第9号(2016年10月発行)からの転載です。
キササゲ(稱名寺境内)
中国原産の樹木で、日本では庭に植えられるか、しばしば、河川に野生化している落葉高木です。高さは3~6m、高いものは12mに達します。私は新潟県の十日町で、神社の周辺に植えられているものを見たことがあります。名前は木ササゲでマメ科の一年草のササゲ豆に似た蒴果をつけることからこの名がついたと考えられています(ササゲ豆は赤飯に入れるマメです)。
キササゲの果実は梓実といわれ、良い腎臓病の薬とされてきました。また、その材は軽く、下駄、器具、版木に利用されたらしいです。若葉は食用になるとされ、その樹皮や根皮は解熱、駆虫、黄疸に利用され有用樹木であることは間違いようです。大切に育てられて来た樹木のようです。
コムラサキとシロシキブ(春風公園)
公園などでムラサキシキブとして植栽されている木はほとんどがこのコムラサキです。本当のムラサキシキブがふつうの里山に生育しているのに対し、このコムラサキはハンノキなどの生える湿った谷などに生育している種類です。
また、花柄が葉腋(枝と葉の付け根)からでるのに対し、葉腋のやや上方に離れて出るのが特徴です。葉の形状にも特徴があり、葉の下半分には鋸歯はなく、葉の上方に低い鋸歯が現れます。これに対しムラサキシキブは葉の全体に鋸歯があります。六月から七月にかけて、桃色の総状花序を多数つけ、八月下旬から九月にかけて紫色の実をつけます。実の色の白いものをシロシキブといい、公園にも多く植栽されています。シロシキブの花も白く、小枝の色も赤い色素が抜けていて、緑色を示していることで花がなくても花と実の色を推測することができます。
ムラサキシキブの植物名の由来はもちろん、あの源氏物語の作者の紫式部から名前をいただいたのですが、その経緯は江戸時代の中期ごろからという説を唱える本もあります。これによると、当初はムラサキシキミ(むらさき重み)と呼ばれていたが、その後優雅なひびきとともにこの名前が定着したと考えられています。別名にハシノキ、コメノキなどがあり、それぞれ、箸に利用されることと、米の木で実が赤米を盛ったように見えることなどからつけられたと考えられます。
※参考文献
新訂牧野新日本植物圖鑑、牧野富太郎、2000、北隆館
世界有用植物事典、1989、平凡社
植物名の由来、中村浩、1998、東京書籍株式会社